
「いい加減」から、無線分割キーボード「小人キー」の自作キット〖陽〗が販売されています。
小人キーは、
- 16mmの狭ピッチ
- 左右各20キー、合計40キー
- 左右それぞれに19mmトラックボール
- ロープロファイルスイッチ
- Bluetooth接続
- ZMK
- ケース一体型テンティング
を組み合わせた自作キーボードです。
一般的な「キーボードにトラックボールを追加した」構成よりも、キーとポインティングデバイスをひとつの操作面としてまとめているのが特徴です。
制作者自身も、小人キーと専用キーキャップ「TypeSurfer」を組み合わせた姿を「超多ボタントラックボール」と捉えています。

16mmピッチの40キー分割レイアウト
小人キーは左右各20キー、合計40キー。
一般的なMXキーボードの19.05mm前後よりも狭い、16mmピッチを採用しています。
この狭ピッチ化は、単純にキーボードを小さくするためだけのものではありません。
制作者の五十川十一氏は、初作「人キー」で感じたキーへの距離や筐体サイズを見直す中で、小人キーを16mmピッチへ発展させています。
指を大きく移動させずに各キーへアクセスできるようにしながら、左右それぞれにトラックボールまで収めた構成です。
左右両方に19mmトラックボール
小人キー最大の特徴のひとつが、左右それぞれに搭載された19mmトラックボールです。
トラックボールセンサーにはPMW3610を2個使用します。
片側だけにトラックボールを搭載する自作キーボードは珍しくありませんが、小人キーでは左右両方に配置。
左右の親指付近からポインター操作へアクセスできます。
標準ファームウェアにはAuto Mouseレイヤーも用意されており、トラックボール操作とキー操作を組み合わせて使える構成です。
トラックボールケースはマグネット式
トラックボール部分も特徴的です。
19mm球を支えるケースには3個のベアリングを使用し、トラックボールケース自体はマグネットで取り付けます。
キットには19mmのPTFE球が左右分付属。
そのまま組み立てて使用できます。
BeeKeebなどで販売されている別素材の19mmボールを使用することも想定されていますが、球によっては別売りのカスタムパーツセットが必要になります。
キーキャップまで専用設計のTypeSurfer
2026年3月15日以降の小人キーキットには、小人キー専用のTypeSurferキーキャップセットが付属します。
〖陽〗ではケースと同色のTypeSurferが含まれているため、キーキャップを別途購入する必要はありません。
TypeSurferは16mmピッチ向けに設計されたChoc V2/MXステム対応キーキャップです。
通常の立体キーボードのように中央へ向かって凹ませるだけではなく、キー全体のシルエットを手の形やトラックボールへつながる面として考えた独特の形状になっています。
制作者が小人キーの設計で掲げている考え方のひとつが、
「人の身体性をバカにしない」
というもの。
指や手の自然な位置から逆算し、キーキャップ、ピッチ、トラックボール、ケース形状まで一体として設計されています。
ケース自体がテンティング機構になる
小人キーには、一般的な分割キーボードで使われる後付けのテンティングスタンドがありません。
ケースそのものにトルクヒンジを組み込み、本体と親指ユニットの角度を調整できる構造になっています。
ビルドガイドを見ると、左右それぞれのケースは、
- 本体側
- 親指ユニット
- トルクヒンジ
- サイドカバー
などに分かれており、それらを組み合わせて立体的な形状を作っています。
キーボードを平面の板として作ってから傾けるのではなく、最初から筐体の一部として角度調整機構を組み込んでいる点が特徴です。
XIAO nRF52840を左右に搭載
マイコンにはSeeed Studio XIAO nRF52840を左右それぞれ1枚使用します。
接続はBluetooth。
ファームウェアはZMKです。
GitHubで公開されている標準キーマップでは、
- Layer 0:QWERTY
- Layer 1:NUMBER & ARROW
- Layer 2:Bluetooth & FUNCTION
- Layer 3:AUTO MOUSE
という4レイヤー構成になっています。
40キーという少ないキー数を、レイヤーとトラックボール操作を組み合わせて補います。
バッテリーと有線の両方で駆動
小人キーはバッテリー駆動とUSB有線駆動の両方に対応します。
左右それぞれにLi-Poバッテリーを搭載。
ケース内部のスペースが限られているため、使用できるバッテリーサイズはおおむね20×25mm、厚さ4〜5mmと指定されています。
ビルドガイドでは200mAhクラスの502025バッテリーが使用例として紹介されています。
Li-Poバッテリーを使用するため、組み立てや配線、極性の確認を含め、取り扱いには十分な注意が必要です。
PCBは4枚構成
内部のPCBは、
- 左本体
- 左親指
- 右本体
- 右親指
の4枚構成。
本体と親指ユニットはFFCで接続します。
ヒンジによって立体的に動くケースへ基板を収めるため、単純な左右1枚ずつのPCBではなく、本体と親指部分を分割した構成です。
キーボードの電気設計とケースの可動構造がかなり密接に結び付いています。
自作キットとしてはしっかり組み立てるタイプ
BOOTHで販売されている〖陽〗は、自作キットです。
ケースやPCB、専用TypeSurfer、トラックボールケースなどは含まれていますが、主要電子部品の一部は別途用意します。
別途必要なのは、
- Chocホットスワップソケット ×40
- ダイオード ×40
- 電源スライドスイッチ ×2
- XIAO nRF52840 ×2
- PMW3610 ×2
- キースイッチ ×40
- Li-Poバッテリー ×2
など。
基板のセンサー周辺回路の一部はPCBA済みですが、ダイオード、ソケット、XIAO、PMW3610などの実装作業があります。
特にXIAOの背面パッドやPMW3610の取り付けも含まれるため、はんだ付け未経験者向けの簡易キットというより、自作そのものを楽しむ製品です。
詳細なビルドガイドはnoteで公開されています。
Choc V2系ロープロファイルスイッチ対応
対応スイッチはChoc V2系。
制作者のビルドガイドでは、
- Kailh Shadow Hunting
- Kailh Saker Mini
- Kailh Purple Swallowtail Mini
- Kailh White Owl Mini
などが使用例として紹介されています。
16mmピッチという小人キーの構成上、一般的な19mmピッチのMXキーボードより、薄型かつ小型のスイッチとの相性が良い設計です。
Lofree系のMXステムロープロファイルスイッチも対応候補として案内されています。
「キーボード+トラックボール」ではなく一つの入力装置
小人キーを見ていると、キーボードとトラックボールを別々の機能として考えるよりも、ひとつの入力装置として見た方が分かりやすく感じます。
40個のキーの中央に後付けでトラックボールを置いたのではなく、
- 手の形
- 指の移動距離
- キーキャップ
- キーピッチ
- 親指位置
- トラックボール
- テンティング
を同時に設計しています。
制作者自身が「超多ボタントラックボール」という表現を気に入っているというのも、この構成を見ると納得できます。
キーボードにマウス機能を足したというより、トラックボールの周囲へ多数の入力ボタンを配置した、と見ることもできます。

主な仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | 小人キー 自作キット〖陽〗 |
| 製作者 | 五十川 十一 / いい加減 |
| 形式 | 左右分割 |
| キー数 | 40キー |
| 左右 | 各20キー |
| キーピッチ | 16mm |
| スイッチ | Choc V2系 / Lofree系 |
| ホットスワップ | 対応(ソケット別途) |
| トラックボール | 19mm ×2 |
| センサー | PMW3610 ×2 |
| トラックボール支持 | 3ベアリング |
| MCU | XIAO nRF52840 ×2 |
| 接続 | Bluetooth / USB |
| ファームウェア | ZMK |
| 電源 | Li-Poバッテリー ×2 / USB |
| テンティング | ケース一体型トルクヒンジ |
| キーキャップ | TypeSurfer 小人キー専用セット付属 |
| 掲載価格 | 28,000円 |
※価格や販売状況は変動するため、BOOTHの商品ページで最新情報を確認してください。
まとめ
小人キーは、16mmピッチの40キー分割キーボードに、左右2個の19mmトラックボールを組み込んだ自作キーボードです。
XIAO nRF52840、PMW3610、ZMK、ロープロファイルスイッチという現在の自作キーボードで使われる要素を採用しながら、面白いのはそれらを単純に集めただけではないこと。
専用TypeSurfer、16mmピッチ、可動する親指ユニット、ケース一体型テンティングまで含め、手の形と操作の流れから全体をまとめています。
最近はトラックボール付き分割キーボード自体は珍しくなくなりました。
その中でも小人キーは、
「キーボードにトラックボールを付ける」のではなく、「超多ボタントラックボールとして入力装置全体を作る」
という方向まで踏み込んでいる点が印象的です。
自作キーボードがキー配列だけではなく、ポインティング操作や筐体形状まで含めた入力デバイス設計へ広がっていることがよく分かる一台です。