HHKB Studioの保守用リニアスイッチを見たときに、どこかで見たような感覚を覚えました。手元にある Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet と非常に似ていたため、簡単に比較してみることにしました。本記事では、HHKB Studioの保守用リニアスイッチと、よく似た構造を持つKailh Deep Sea Silent Box Switch Isletを比較し、その違いと共通点を解説します。
購入した製品
- PFU キーボード HHKB Studio リニアスイッチ 黒
- 10個入り
- PFUロゴ入りのキースイッチプーラーが付属
- 専用ケースがしっかり、保管にも便利
キースイッチの形状は Kailh Deep Sea Silent Box Switch Isletに似ています。
Kailh Deep Sea Silent Pro Box Switch Islet(サイレントリニア/3pin/45gf(O)/5pcs) – TALPKEYBOARD
パッケージ
比較写真と所見
トップハウジング
- 左:Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet
- 右:HHKB Studio リニアスイッチ
- 相違点:
- 樹脂の色が異なる
- Kailh はライトカラム部が開いているが、HHKB Studio はLED非搭載の為ふさがれている
ボトムハウジング
- 色が異なる以外は大きな差は見られず
- モールドの違いは特に確認できず
ステム
- 上:Kailh
- 下:HHKB Studio
- 共通点:両方とも薄くルブ済み
- 見た目上の相違は色のみ
スプリング
- 巻き数が異なる
- 材質はおそらく同一に見えるが、未検証
Kailh公開の内部構造との比較
Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet は、メーカーが構造図を公開しています。実際に分解した結果、この構造図と一致しており、
- ライトレンズ(light guide post)以外は、HHKB Studioのリニアスイッチと同一に見える構造でした。
- トップハウジングの形状のみが異なり、LED非搭載に合わせて封じられている点が主な違いです。
- 材質については断定できませんが、樹脂の種類はおそらく同一か非常に近いものと見られます(ただし顔料の違いで粘度差はある可能性があります)。
キースイッチ製造におけるOEMの背景
キースイッチメーカーが自社ブランド製品に加えてOEM提供を行うのは、主に製造にかかる金型費用を効率よく回収するためです。キースイッチの製造には非常に高精度な金型が必要となり、その初期費用は非常に高額です。そのため、一つの金型で複数のスイッチを製造することで、コストの分散と製造数の確保を実現しています。
Kailhのような大手メーカーは、自社製品を展開する一方、他メーカーやショップ向けに別注仕様のOEMスイッチを多数提供しています。OEMでは、既存の金型をそのまま使いつつ、ハウジングやステムの色、スプリングの特性、あるいは樹脂材質を変更する程度のカスタマイズが可能であり、これらは数万個単位の発注で実現されるとされています。
一方、まったく新規の金型を用いたスイッチの開発は、より大きな発注数や、発注側が設計費や金型費を負担する必要があるなど、かなりのコストがかかるのが一般的です。こうした背景があるため、OEM提供は金型投資の回収手段としても非常に合理的な戦略と言えるでしょう。
Kailh Deep Sea Silent Box Switch Isletの特徴
Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet は、比較的静音性の高いサイレントリニアスイッチです。TTC Frozen Silent V2 ほどの静音性ではないものの、打鍵時のノイズは十分に抑えられており、一般的な静音ニーズには応えられる設計とされています。
内部に設けられた独自のスライダー構造により、押下時にごくわずかに引っかかるような感触があります。この感触が「静電容量スイッチの押し心地に近い」と感じるユーザーもおり、独特の打鍵体験を提供しています。
静音性と滑らかさのバランスを取りつつ、一定の存在感を持ったスイッチを求める方に適している構造だと言えます。
Kailh Deep Sea Silent Pro Box Switch Islet(サイレントリニア/3pin/45gf(O)/5pcs) – TALPKEYBOARD
おわりに
今回は、HHKB Studioの保守用リニアスイッチと、Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet を比較しました。
HHKB Studio に搭載されているスイッチに近い構造のサイレントリニアを探している方は、Kailh Deep Sea Silent Box Switch Islet を検討する価値があるかもしれません。
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