先日、日本でのデミニミスルール(少額輸入品の関税や消費税を免税とする制度)を見直すとの報道がありました。
みなさんはキーボードや電子工作に関して中国通販を利用することが多いかと思います。このルール見直しは一見、そういった利用者が損をしてしまうのではないかと受け止められてしまいます。
この記事では、デミニミスルールの本来の目的や背景と、国内消費者・事業者に与える影響について整理してみようと思います。
財務省は、少額の輸入品への関税や消費税を免除する制度「デミニミスルール」を見直し、消費税を課税する方向で検討に入った。中国発のインターネット通販サイトなどがこの制度を利用して低価格商品の販売を増やしており、海外と国内の事業者の競争条件を平等にする狙いがある。米国のトランプ政権が中国からの輸入品に適用を停止するなど、世界でも見直しの動きが広がっている。
この製品の要点
- デミニミスルールとは「一定額以下の輸入品は免税」とする国際的慣行
- 本来は発展途上国支援や事務負担削減の目的で導入された
- TemuやSHEINなど中国ECがこの制度を活用し急成長
- 消費者には「得」のように見えて、実は税収や郵便インフラに「見えない負担」
- 今回の見直しは「損をやめる」ための是正措置ともいえる
デミニミスルールとは?
「デミニミス(de minimis)」とは、ラテン語で「取るに足らない」という意味の言葉で、関税や消費税の世界では「少額取引には課税しない」というルールを指します。
現在の日本では、1万円未満の個人輸入品については関税・消費税が免除されています。この制度の背景には以下のような事情があります:
- 国際郵便をスムーズにやり取りするための合理化
- 特に発展途上国にとって、通関作業の事務負担が重いため、免除の仕組みで支援
- 仕分けや徴税のコストの方が高くつく可能性がある
「消費者は得」の裏にある、見えないコスト
この制度は一見、海外通販を利用する消費者にとって「お得」に見えます。
しかし、以下のような“目に見えにくい損失”が、すでに発生していることをご存じでしょうか?
1. 国の税収が減っている
- 免税によって、毎年数百億円規模の消費税が未徴収になっているとされます。
- 結果として、その穴埋めは国内の別の税(所得税・法人税など)で補われている可能性があります。
2. 郵便インフラは“誰か”が支えている
- 通関処理や仕分け、配達にはコストがかかります。
- 特に国際郵便では、日本郵便や税関がコストをかぶっている部分もあり、実質的に国費(税金)で支えている構図があります。
3. 国内事業者が不利な競争を強いられている
- TemuやSHEINのような海外ECは、免税と低価格を武器に価格破壊を進めています。
- その一方で、国内事業者は正規の税を支払いながら競争せざるを得ないため、健全な経済循環が損なわれています。
世界でも見直しが進んでいる
日本だけでなく、他国でもこのルールを見直す動きが進んでいます。
国・地域 | 現在の対応状況 |
---|---|
米国 | $800未満免税だが、中国製品など一部例外で見直し進行中 |
EU | 2021年に€22の免税枠を廃止。すべてのEC輸入品が課税対象に |
日本 | 1万円未満免税 → 現在見直し議論中(2025年5月報道) |
誤解しやすいけれど、見直しは「損」ではない
今回の制度見直しについて、「消費者が損をする」との声も聞かれます。
しかし実態は、
「すでに消費者は損をしていた」
免税によって税収が減り、郵便インフラも国家が支え、国内産業が衰退ー
という、構造的な負担が生じていたともいえます。
制度見直しは、この“見えない損失”を止めるための是正措置であり、国内全体で見ればむしろ健全化に向けたステップといえるでしょう。
まとめ
- デミニミスルールは、もともと発展途上国支援や合理化を目的とした制度
- 近年は中国発のECサイトが制度を利用し、免税のまま安価な商品を大量に販売
- 消費者は得をしているように見えるが、実は税金やインフラ維持で“間接的に損”していた
- 財務省の見直し方針は、健全な競争環境と財政健全化を目指す一環として注目すべき動き
※本記事は報道内容と制度趣旨をもとに筆者の知見で構成したものであり、政策決定の詳細や税制改正の内容については最新の政府発表をご確認ください。
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