これまでに、リチウムイオン電池の発火リスク(STEP 1)、製造物責任法と頒布責任(STEP 2)、安全設計の実践(STEP 3)を確認してきました。
最終ステップでは、実際に事故が起きてしまった場合に、設計者・頒布者が負うことになる法的責任と社会的リスクについて明確にしておきます。
設計・頒布者に及ぶ法的責任
製品が火災・負傷などの事故を引き起こした場合、以下のような責任を問われる可能性があります。
■ 製造物責任法(PL法)
- 製品に「通常有すべき安全性を欠く欠陥」があった場合、無過失での損害賠償責任が生じます。
- 自作キットや小規模頒布であっても、反復性と頒布の意図があれば適用対象となる可能性があります。
参照元
・消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/pl_qa.html
・契約ウォッチ「製造物責任法とは?事例を含めて解説」
https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/pl-hou/
■ 民法上の不法行為責任
- 製造・頒布に過失(設計不備、警告不足など)があれば、損害の全額賠償が発生します。
- 一般的な損害賠償額には、損傷機器・医療費・逸失利益・慰謝料などが含まれます。
■ 刑事責任(重過失)
- 頒布者が「重大な過失により」人命や財産に損害を与えた場合、業務上過失致傷罪などが適用されることがあります。
保険の適用とその限界
事前にPL保険(生産物賠償責任保険)に加入していれば、損害賠償の一部または全部が補償される可能性があります。
ただし、以下のような注意点があります:
- 保険金が出るのは正規の製品として届け出た範囲内の頒布のみ
- 設計ミスや重大な注意義務違反がある場合、補償対象外となる可能性も
参照元
・東京海上日動「生産物賠償責任保険」
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/service/business/hojin/pl/
社会的影響と再起不能リスク
法的責任に加え、事故を起こした場合には事業・活動自体の継続が困難になるほどの社会的影響が発生する可能性があります。
- 顧客・取引先からの信用喪失
- SNSや報道による拡散
- 二次被害(中古販売・メルカリ等で拡散された製品による事故)
事故の内容が共有された場合、頒布者個人への特定・非難・炎上は免れません。
特に個人事業や副業レベルの活動では、一件の事故が「活動の終わり」を意味するケースも珍しくありません。
まとめ
- 製品の事故は、設計者や頒布者の責任として問われる可能性が高い
- 製造物責任法の対象は、自作・無償配布であっても該当しうる
- 法的責任だけでなく、社会的信用の毀損や事業停止リスクも現実的に考慮すべき
- 「燃えない設計」をしない限り、いつか誰かの人生を壊す製品になりうるという認識が必要
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