最近、Amazonで中国のストアが販売する "Corne風" キーボードを見かけました。安価ですしAmazonですので、気になった方もいらっしゃると思います。
しかし、これらの製品は果たして「合法」なのでしょうか? また、オリジナルの作者に対するリスペクトという観点ではどうなのでしょうか。今回は、キーボードのオープンソースライセンスをもとに整理してみたいと思います。
Corne keyboardのライセンス
Corne keyboardは、日本の開発者 foostan氏が公開しているキーボードです。GitHub上のプロジェクト(https://github.com/foostan/crkbd)では、以下の2種類のライセンスが明示されています。
- MIT License
- CC-BY-4.0(Creative Commons Attribution 4.0)
どちらも商用利用を認める緩やかなライセンスですが、共通して「作者クレジット(Attribution)の明示」が義務づけられています。
類似製品
以下のような製品がAmazonで販売されています:
YMDK スプリットキーボード Corne V4.1 46キー... https://www.amazon.co.jp/dp/B0DTD1ZJWL
- 基板上に"corne"ロゴが印字されているため、Corne keyboardに基づいていることは明白
- 商品ページには作者名やライセンスに関する明記はない
- 実際の梱包物にライセンス情報が同梱されているかは未確認
- しかし、foostan氏の名前やGitHubへのリンクはなし
- ライセンス(MIT / CC-BY-4.0)に関する表記も見当たりません
つまり、ライセンスの条件である「作者名・出典の明記」「ライセンス文の同梱」などが不十分です。
これにより、
- 法的にはグレー(ロゴがあるため最低限のAttributionは存在)
- 倫理的にはアウト寄り(作者の貢献が見えず、営利利用されている)
と評価して良いと考えます。
正規販売品との違い
日本国内では、遊舎工房がCorne keyboardを正規に販売しています。これらは、
- 作者と直接連携し、設計を尊重したパッケージ
- コミュニティでの継続的なメンテナンスやサポート
といった点で、オープンソースに対する理解とリスペクトが明確と判断できます。ただし商品ページ自体には foostan氏のクレジットやライセンスの記載がなく、この点は今後改善の余地があるかもしれません。
まとめ:ユーザーとしてどう考えるべき?
Corne keyboardはオープンソースなので、第三者がそれを元に製品を作ること自体は条件を満たせば合法です。しかし、それがオリジナルの貢献者に正しく報いる形になっているかは別の問題です。
今後このような製品に出会ったときは:
- 作者名や出典が明記されているか?
- オリジナルのライセンスが表示されているか?
- 正規販売ルートが存在するか?
といった点を意識して選ぶと、開発者や文化への健全な支援につながります。
AliExpressにも類似製品が多数存在
今回紹介したような類似製品は、AmazonだけでなくAliExpressにも非常に多く出回っています。見た目はそっくりでも、
- 作者へのクレジットが一切ない
- 改変された設計が無断で流通している
- 品質やサポートにばらつきがある可能性
といった問題を抱えるケースも少なくありません。価格だけを見て判断するのではなく「これは誰の設計か」「その人にちゃんと敬意が払われているか」という視点を持つことが、これからのものづくりの世界では特に大切になるのではと思います。
「自由に使っていい」という事は「何をしてもいい」事ではありません
国内でも広がる改編製品
コピーや改編の問題は、何も海外製品に限った話ではありません。日本国内でも、オープンソースの考え方に基づいた自作キーボードの頒布や販売が活発に行われています。作ること自体は歓迎される文化ですが、クレジット表記が省略されたり、原作者への言及が一切ないまま頒布・販売される例も見受けられます。
特に頒布物として販売する場合は、ライセンスの種類を確認した上で、元の開発者への敬意を示す表示(作者名・出典URL・ライセンス表記など)を行うことが重要です。これは、たとえ営利目的でなくても同様です。開発者とユーザー、そして派生作者がお互いに敬意を払う文化を築いていくことが、今後における持続可能な自作キーボードコミュニティを支える鍵となるでしょう。
補足:オープンソースハードウェアの難しさ
ソフトウェアと比べ、ハードウェアのオープンソースライセンスはまだ発展途上の分野です。一人一人が意識して作ること、また製品を選択してゆくことが、開発者や文化を守る第一歩になると考えます。
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