当店で販売しているキーボードなどに使っています、ウォルナットなどの銘木の突き板をMDFに貼った材について、どのように加工しているかを今回ご紹介します。
まず銘木の突き板をMDFに貼った材を購入するのですが、専門の突き板業者さんが全国にいらっしゃいますので、そちらから突き板材と貼りの指定をして購入します。突き板は合板に貼って家具やスピーカーなどに使われていますので、業者さんは全国に結構いらっしゃいます。
購入は個人の方でも可能ですが、当店が購入しているところの最低単位が180cmx90cmと、よくホームセンターで販売しているベニア板のサイズになりますので、なかなか購入に踏み切るには勇気がいると思います。こちらを購入し、60x30cmにカットしてもらったものを納入いただいています。
突き板シートはA4サイズから販売している業者さんがいくつかいらっしゃいます。裏に両面テープをつけたものなども販売されています。ご自身でチャレンジしてみたい方は、それをホームセンターで販売されているMDFに貼り付けると、同じような形になると思います。
カットされた突き板MDFをまずはキーボードのプレートなどの形状にレーザー加工機でカットします。カットする際の注意点ですが、MDFをレーザー加工機でカットされたことのある方ならご存知だと思いますが、切り口周辺が焦げてしまいます。切断面が焦げるのは、MDFの生地の目隠しになってちょうど良いのですが、突き板の部分が焦げてしまうとかっこよくありませんし、オイルフィニッシュ前の生地にヤニや汚れがついてしまうと取れないこともあるので、マスキングテープを板の両面に貼り、焦げ目や加工時に傷がつかないようにしています。
マスキングテープと一言で’言っても、今は装飾用を中心にいろいろな商品が販売されています。板に貼るマスキングテープは、はがすときに突き板も一緒にはがれないようにできるだけ粘着力の弱いもの、そしてレーザー加工の際にヤニや焦げ、異臭の原因となるようなプラスチック系のコーティングなどがされていないものを探しました。現在はこちらを使っています。
カモ井 マスキングテープ ミント 壁紙用 4巻入 30mm×18M
こちらはアクリルをレーザーカットしたものです。ご覧の通り、保護紙は特に汚れたりはしません。
マスキングテープを貼った突き板をレーザー加工機でカットした直後です。切断箇所の周辺にヤニや汚れが付着しているのがわかると思います。
カットした後はなるべく早くマスキングテープをはがして、固くしぼった布で切断面を拭き、ヤニや汚れをとります。MDFを固めている樹脂や、突き板を貼り付けている接着剤の成分が、レーザーカット時にヤニとなってでてきますので、ここで極力拭き取っておきます。外で作業をしていますが、室内で行うと焦げたにおいが充満しますので、外ではがして清掃してから室内に持ち込みます。
作業終了後はレンズとレーザーを反射するガラスを毎回取り外し、専用の洗浄剤で清掃します。特にMDFを使った時は、煙でレンズやガラスの表面が汚れます。放っておくと取れなくなり、レンズやガラスの表面の特殊なコーティングを痛める場合がありますので、毎回清掃しています。
汚れているからといって強くこすってしまうと、これもコーティングがはがれる原因になりますので洗浄剤をレンズの上に表面張力で貼る形にして、少し時間をおいて汚れを浮き出すようにしてから、そっと押さえて水分をとります。
板を清掃し終わった後は、オイルを塗り込みます。私は荏油という、荏胡麻からできた天然の乾性油を使っています。手に触れるものですので、人工の溶剤系が入っていないものがいいなと思って選んでいます。現在はこちらを使っています。
この荏油を乾いた布につけて刷り込んでゆきます。結構板に染み込んでゆきますので、べたべたにぬってゆき、少しして様子を見て塗り足しています。全部塗り終わったら新聞紙の上に並べて2日ばかり陰干しします。陰干しが終わったら、乾拭きして完成とします。塗った直後に艶がでて色が深くなるのが面白くて、それを見るのが楽しみで毎回塗っています。
完成品がこちらです。突き板は自然の木材の表面を薄く削いだものですので、場所によっては木目が粗かったり表面が剥がれやすかったり、MDFの地が透けて見えていたりもありますので、そこを避けて使うと歩留まりもあまりよいとも言えないのですが、なかなか良い雰囲気ですので、継続して作っています。
こちらのキーテスターはショップで販売しています。よろしかったらご覧ください。
もしご自分で作ってみたいと思われた方へのご注意なのですが、レーザー加工機をお持ちでない場合に、材料持ち込みで加工サービスに依頼するというのはおそらくどこも受け入れてもらえないと思います。加工サービスの場合、用意している材料に対してパラメータを細かく決めて、カットミスのないようにどこもされていると思います。パラメータの持っていない材料はテストカットもできませんので、受け入れてくれるところは少ないのではないかと思います。また材料的に煙が出やすく、フィルターの汚れが非常に早いので、アクリルのみのサービスを行っているところは無理かなと思います。
またホームセンターなどでの機材レンタルサービスを利用する場合も、材料持ち込みが可能かどうかを確認し、可能な場合でも材料を見せて事前に承諾を取っておいたほうがよいと思います。ぜひご注意ください。
当店で作っているものについては、可能な限り手順やコツを公開してゆこうと思っていますので、今後もよろしくお願いいたします。