TALPKEYBOARD BLOG

TALPKEYBOARDは、自作キーボードのためのパーツやキットを販売するショップです。TALP キーボードブログでは、当店で販売している商品に限らず、また自作キーボードにもこだわらず、キーボードについてのさまざまな情報を、独断と偏見で記してゆきます。

KAT Alphaキーキャップの文字にじみについての検証①

先日、本ブログでも報告しましたが、当店でも一時期販売したKAT Alphaキーキャップの一部に昇華印刷の文字のにじみが発生していました。このような状況です。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115601j:plain

当店での対策については、先日のブログ記事と当店ショップのニュースページに交換方法を記しておりますので、同様の症状の方はご連絡頂ければと存じます。以下のブログの内容をご参照ください。

正常な商品を仕入元のKBDfansより保守交換用として確保し、交換対応は問題なく可能ではありますが、腑に落ちないのが、なぜこのようににじんでしまったのかです。

 

 

昇華印刷はキーキャップだけではなく、世の中のさまざまなモノに利用されているものです。紙の印刷から、Tシャツやノボリの印刷、プラスチック製品などに多く利用されています。その特徴は、塗料を塗るのではなく、高温で個体の染料を昇華させ、相手に染み込ませるという方法です。Wikipediaからの抜粋を以下に記します。

昇華型印刷で一般的な昇華再転写方式のプロセスを述べると、まず、特殊な昇華染料に圧電プリントヘッドを当てることにより、ゲル状の昇華インクを「転写紙」に反転印刷させる。この「転写紙」とは高い離型性を持ったインクジェット紙のことで、昇華型インクをこれに付着させた状態で保持する。次に、このデジタルデザインが印刷された転写紙を、印刷を行う対象物と一緒にヒートプレス機に設置する。

画像を転写紙から印刷対象物に転写するには、時間、温度、圧力を適切に組み合わせた熱プレス機プロセスが必要となるが、それぞれどのようにすれば良いかは、印刷する対象によって異なるので注意が必要である。この過程で、昇華した色素が分子レベルで印刷対象物に転写される。昇華印刷に使用される最も一般的な染料では、摂氏175度(華氏350度)程度で昇華される。ただし、最適な発色を得るには、通常、摂氏195〜215度(華氏380〜420度)の範囲で行うのがよい。

昇華型プリントを利用すると、ほぼ永久的な高解像度のフルカラープリントが得られる。染料は印刷対象物に部分的に張り付いているわけではなく、分子レベルで印刷対象物と融合しているため(スクリーン印刷や衣服に直接印刷する直接昇華方式のガーメントプリンターなどと同様)、一般的な利用環境のもとでは、プリントが基材から割れたり、色あせたり、はがれたりすることはない。

記載の通り、常温でにじんでゆくというのが考えにくい印刷手法なのです。しかしながらにじみが発生してしまっているのか... そして本日このような投稿を見かけました。

ぬるま湯と洗剤で洗ったらにじんだと記載されています。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207120922j:plain

うーん、KATの昇華印刷はぬるま湯でにじむの?そもそも昇華印刷の昇華温度とかなり差があるしありえない感じがするし、これらが原因で、昇華印刷ダメ説なんて流れるとばかばかしいし..

というわけで、とりあえず検証をはじめて見ることとしました。まず今回は、同じKAT Alphaのにじみのないキーキャップに対して、食器用洗剤をスポンジにつけて洗う、洗って熱湯につける、熱湯につけるだけの3パターンの作業を行うこととします。今回の実験台の3つです。よろしくおねがいします。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115023j:plain

 

まず食器用洗剤をスポンジにつけて、こすり洗いを行いました。結構強めに、スポンジの固い方をつけてあらいます。水はぬるま湯。下が作業完了した画像です。とても綺麗になりました。にじみは全くありません。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115042j:plain

 

次に、洗剤で洗ったRAISEと洗っていないLOWERを熱湯につけます。ケトルの熱湯をあらかじめ熱しておいた器に注ぎ、キーキャップを投入します。熱湯はおよそ90度。10分程度放置します。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115055j:plain

 

熱湯につけて10分程度放置した状態がこちらです。さらに白が美しくなった気がします。あいかわらずにじみは発生していません。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115112j:plain

 

全く状況に変化がなかったので、もうワンランク上のテストを行いました。いつも黒の染色に使っている大きな鍋に水を入れ煮立てて、その中にキーキャップを投入、30分ほど煮込む耐久テストです。こちらが鍋とテストされるRAISEとLOWERです。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115127j:plain

 

30分経過したので回収。鍋についていた染料が溶け出して、キーキャップがきれいなグレーに染まってしまいました。RAISEとLOWERなので、アクセントになってよいのではないだろうかと気を取り直しています。ちなみににじんでいません。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115140j:plain

 

ばっちり染まりました。にじみはありません。

f:id:TALPKEYBOARD:20211207115150j:plain

今回は正常なKAT Alphaのキーキャップを用いてのテストでした。これより温度を上げてゆくと昇華印刷の昇華温度に近くなってきます。にじみが発生しているキーキャップは常温で保存していると思いますので、これ以上の温度でのテストはあまり意味がないかと思っています。

一般的な昇華印刷のキーキャップについては、このようにそうそうにじみや変色が起きるものではないという事を、みなさんご認識いただければと思います。

でも、だったらKAT Alphaのにじみって何が原因なんだよとみなさんお思いかと思います。そうですね。確か。私も知りたい。考えられるのは昇華印刷のインク、または昇華インクで文字を印刷している専用の印刷紙に、製造不良などに起因するトラブルが発生したのではないかと思っています。昇華印刷のインクに何か混入していたか、印刷紙の糊などの成分と混ざったなどの問題などが考えられると思っています。ただし昇華印刷に関するトラブルの情報、ネットのレベルでは探しきれていません。

少し時間をいただき、ここに関して調べてみようと思っています。

年末セール開催中です。ぜひお越しください。

talpkeyboard.net