個人でキーキャップに文字を印刷したいなと考えられる方はそこそこ多いかなと思います。方法はいくつかありますが、なかなか難しいところもあります。以前私が紹介した昇華印刷を用いてアイロンで文字転写する作業は、うまくゆくとよいのですが、うっかりアイロンの温度や押さえ方を間違えると全然失敗してしまうというものでした。治具などを作ればよいのでしょうが、なかなか手間がかかりそうです。
キーボードに特化した転写シートも販売されています。手軽でとてもよいのですが、フォントを選んで文字や絵柄を用いたいとなると厳しいと思います。

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ですので、今回は別の作戦をとりました。染色とレーザー加工機を用いた文字彫刻と書いていますが、簡単にいうと、白いキーキャップを樹脂用の染色剤(SDN)で染めると白いキーキャップの表面が薄く染色される事になるので、染まった部分をそぎ取るようにレーザー加工機で文字を彫刻してあげると、文字が白く残るという理屈です。
染色せずにCO2レーザー加工機で彫刻だけしても、表面を削るだけで色がつかないので、視認性が全然悪いです。(ファイバーレーザー加工機を用いた場合はグレー色での文字彫刻ができます)ですので今回は染めて部分を削る方法をとりました。
早速実験結果。作業後のキーキャップです。
かなり上出来感がありますが、文字はもっと茶色がかっています。レーザーで焼けるので、うまくパラメータを調整して焦げないようにする必要があります。以下に簡単ですが作業内容を説明します。
まず最初にキーキャップを染めます。すこれは染まった後です。今回は気分で100均で買った計量カップをコンロにかざしながらやってみたのですが、やりはじめてからそういや前にやった時30分くらいやったよなと思い出し、コンロに置けるサイズのなべでやればよかったと後悔した次第です。手が疲れた。前回の作業内容はこちらから。
染まる様子を確かめながら30分で完成です。左が染める前、右が染めた後です。結構しっかりと染まります。
染めたキーキャップの角を少しカッターで削いでみました。染料はそんなに染み込んではいません。表面を薄く削ればでてきます。
いけそうなのでレーザー加工機で彫刻を行うためのデータを作成します。とはいっても適当です。キーキャップの天面のサイズの枠を作り、それに合うように文字を入れて、最後に枠のレイヤーを消します。お約束ですが文字はアウトラインにします。文字を入力しようとしたらこれがでてきましたので、そのまま使ってみました。
我が社最高額の資産、米国エピログ社製のCO2レーザー加工機です。キーボードのZINCではありません。日本でのレーザー加工機の主流はトロテック(白と赤の筐体のやつ)です。エピログは白青です。トロテック、あれはいい機械です。でもエピログも結構いい機械です。トロテックと違ってアメリカならではの大らかさがあります。ちなみにトロテックは専用OSなのですが、エピログはLinuxだそうで、いろいろと遊べる余地があるようです。pdfファイルから直出力とか(改造はメーカーの保証対象外ですし危険ですのでやめましょう)
キーキャップのど真ん中にレーザーポインタをあてます。今回は適当です。本気でやるときは治具をつくろうと思います。高さの調整まで終わったら、先ほど作ったデータを用いて彫刻します。図形の中心とポインタの中心を同一として彫刻する機能がありますので、作業自体は簡単です。ただしパラメータは試行錯誤が必要です。
何個か失敗しましたが、なかなかよい感じのものが完成です。レーザーのパワーが少なすぎると染色部分が微妙に残ります。パワーが大きいと焦げます。うまく良いポイントを探るには、いくつかのキーキャップを犠牲にする必要がありそうです。
キーキャップの色は白でなくても、どきつい色の組みあわせにするのも良いのではないかとの意見もいただいたので、色の組み合わせは考えてみようと思います。また、彫刻の前に染色のほうが思ったより良い感じでしたので、キーキャップの染色についても考えてみようと思います。XDAの黒が欲しいんですが、世の中に見当たらないので。
このやり方は面白そうですので、もし近くにレーザー加工機が使える環境にある方々は、おひまなときにチャレンジするのは楽しいかと思います。
少しおひまがない方は、某遊舎工房さんでキーキャップレーザー刻印サービスを行なっています。こちらはキーキャップに染色せずに直接レーザーで刻印を行います。文字色に制限があるかとは思いますが、精度はすごく良さそうなので、オーダーするのはありだと思っています。
今回使った染料はこちらになります。